各話解説

第1話

向日葵の里

とある山奥の旅館に【あなた】は辿り付いた。
大企業が所有している旅館で、リムジンバスの送迎付き。

爽やかな山の空気、気持ちの良い木漏れ日、鳥の声と大自然を堪能できる立地で、長期滞在に申し分ない。隣室の風魔小太郎と名乗る客も気さくで、これは良い時間が過ごせると伸びをした【あなた】の視界に赤い影が映り込んだ。

家族連れの宿泊客の子供だろう。そう納得する【あなた】は、これが恐怖の始まりだということを知る由もなかった。

第2話の公開は終了いたしました

第3話

足柄

昨日から風魔くんが戻らない。一緒に探しに行こうと持ちかけた時、鈴ヶ森さんはにこやかな顔とは信じられない程に解離した、冷たい声を発した。

「―――ああ、そうですか。」

その声は今まで彼女がたどたどしく使っていた京都弁ではなくハッキリとした標準語。途端に、「自分は彼女の何を知っているのだろう」とゾッとする。そういえば親子と思っていたが大江ちゃんへの態度も変だ。この人も何かおかしな事情があるのではないか。

帰りたい、しかしこの屋敷のわらべ歌も解明しないまま?と悶々とする【あなた】。

思い余ってわらべ歌の掛け軸を持って帰ろうか、と立ち上がったところで文机の下から腕が伸び、足を掴まれた、気がした。

第4話の公開は終了いたしました

第5話

宇治川

帰りたいと女将に告げてから3日経つが、いまだにバスが迎えに来る気配は無い。

宿の中でじっとしているのも恐ろしいので散策に出かけた【あなた】は、宿から離れた場所にぽつりと建つ庵を見つけた。庵の住民に「あの宿の客ならば疾く山を去れ」「できる限り、早くだ」と告げられいよいよ帰りたい思いが増した。あの宿は一体何なのか。

宿に帰るとまた知らない客が増えていた。
考えてみればこんな秘境に途切れず客が来るのもおかしい。バスが来るのであれば何故自分を乗せて帰ってくれなかった。
にこやかに挨拶してくる新しい客の声も耳に入らない。

ぐらぐらしながら宿に入ると、怒り狂ったように天井から足音がした。

第6話

千丈ヶ嶽

散策の途中、山中で一人の少女に声をかけられた。
宿で見かけたことは無い。庵の男は一人で住んでいると言っていた。

では、この少女はどこから来た?

こちらの恐怖と警戒を意に介さず、金髪の少女は「あの宿から出られる方法を教えてやる」と言って来た。夜、ある人物にある言葉を言えば良いだけだと。信じて良いのか、実行すべきか、迷いながらも藁にもすがる思いで【あなた】は決断した。

夜半、大江ちゃんの部屋の前でそっと唱える。

「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」

途端、人間のものとは思えない速さで襖が開き、―――